水族館裏探訪 世界で最も人気のある水族館・ モントレー湾水族館
photo:市川善郎、text:茂木みかほ(ダイブネット)
全長6mのジャイアントケルプ(巨大コンブ)の森が広がる巨大水槽。オープンルーフから降り注ぐ太陽光が、水槽内を泳ぎ回る銀色のカタクチイワシを照らしています。まるで本物の海のようなこの水槽こそ、今回紹介するモントレー湾水族館のシンボルです。
アメリカ西海岸、サンフランシスコから南へ約200kmに位置するモントレー湾水族館は、年間およそ200万人が訪れる人気の水族館。 海洋環境の保護をテーマに、目の前に広がるモントレー湾の自然をメインに展示しています。どの展示も生きものの暮らしぶりがわかるよう工夫が施されてい て、子どもから大人まで楽しみながら学ぶことができます。また当館は、マグロやラッコの保護・調査にも力を入れています。
そんな他に類を見ない画期的な水族館ですが、設立したのは、アメリカの有名なIT企業の創設者、デービッド・パッカード氏。彼が5500万ドルの資金を出し、もともとイワシの缶詰工場だった建物を水族館に改築しました。そして、海洋生物学者である娘のジュリーを館長にし、モントレー湾水族館は、1984年に開館したのです。以来、モントレーといえば水族館、のイメージがすっかり定着しました。
館内に一歩足を踏み入れれば、これまで体験したことのないようなわくわくドキドキを感じることでしょう。 それでは、実際にどんな展示があるのか紹介していきましょう。
館内マップ詳細(PDF)
モントレー湾水族館の見学フロアは、1階と2階に分かれています。館内は広く、各展示内容が充実しているので、じっくり見ていたらアッという間に1日が過ぎてしまいます。
1F
1Fには、ジャイアントケルプやラッコの水槽をはじめ、深海や環境保護をテーマにした展示などが見られます。その他、タッチプールやタツノオトシゴの展示も見逃せません。
世界で初めて成功したジャイアントケルプ(コンブの仲間)の展示水槽。ケルプの森には、根魚と呼ばれるカサゴやメバルの仲間や、イワシの仲間、レオパードシャーク、ガリバルディ、ヒトデなどたくさんの生きものを見ることができる。
砂地の海底コーナーに展示されている、美しいハナギンチャクの仲間。彼らは足盤で岩に付着するイソギンチャクとは違い、砂地に巣穴を作り、それに潜って生活している。
「sand dollar」と呼ばれるスカシカシパンなどウニの仲間がたっくさん。これだけ数が多いと見応えがあり面白い。
ガンギエイの卵の中に生きている胎仔を観察できる。成長の過程がはっきり見える画期的な展示。
館内には子供向けの展示が何カ所もあり、面積も広い。水遊びを通して磯の生物について学ぶコーナーや、水中の岩場を模写したトンネルをくぐりながら、ぬいぐるみのウツボを引っ張ってその長さを体感するコーナーなどがある。子供たちは何時間でも遊んでいそうな感じ。
水辺の鳥のコーナーでは、河口の湿地、砂丘、砂浜の3種類の環境を再現。普通は双眼鏡を使わないと見られないような鳥たちを、すぐ目の前で見ることができる。当館では、親鳥に放棄された卵の世話もしている。
白くてふわふわの姿が見るからにかわいいシロチドリ。北アメリカのチドリの中で最も小さく、白い鳥。
実際に生きものに触れるタッチプールは、いつも子どもたちで大賑わい。ヒトデやカニ、ナマコなどに触れ、ボランティアスタッフが解説をしてくれる楽しいコーナー。
さまざまな深海の映像を見ながら、3つのミッションをこなしていく深海探査ゲーム。面白くて、大人でもつい夢中になってしまう。
ラッコは、ジャイアントケルプに棲む代表的な生きもの。野生下では、風や波で流されないようにジャイアントケルプを巻き付けて寝る姿などを観察できるが、このコーナーでは、遊び好きなラッコのさまざまな行動を見ることができる。
食事とトレーニングタイムは、1日3回開催。コチラを見るなら2Fからがオススメ。
(上の写真のようにプカプカ浮いている姿は2Fから、水中を泳いでいる姿は1Fから見ることができる)
各コーナーの入り口には大きなモニターがあり、これから見る生物の動画が流れている。特にクローズアップの映像は、生物の詳細がわかるので、映像をみてから実物を見るといっそう興味深く観察できる。
見事なまでに海藻そっくりに擬態するリーフィーシードラゴン。オスが尾の下にあるスポンジ状の育児嚢に卵を付けてふ化させるため、オスが妊娠する魚とも言われる。ストレスに敏感で飼育は困難だが、当館ではうまく展示している。
ウィーディーシードラゴンは、体に派手な突起はなく、体色は赤みがかっていて黄色の斑点がある。リーフィーシードラゴンとは違い、オスは育児嚢を持たず、メスの産んだ卵を腹部体表に付着させて保護する。
「VANISHING WILDLIFE(消えゆく野生生物)」のコーナーでは、マグロ、ウミガメ、サメの保護について学べる。ここを見るだけでも、10分以上はかかるほど展示の内容が濃い。
寿司やツナサンドなど人気メニューの横のレバーを引くと、サメやマグロが捕獲されたり、市場で競りにかけられているところの映像がでてくる。これらの生きものの混獲や乱獲の問題を訴え、一般の消費者に環境に優しいシーフードを選んでもらうおうといった展示。
レストランを模して作られたこの展示では、海産物の持続可能な利用法を音声と映像で学ぶことができる。魚の種類によってオーダーできたり、できなかったりする。
クラゲコーナーの入り口の手前。天井のドーム型の水槽を、カタクチイワシの群れが流れている。
お土産ショップの入り口。左の壁の裏にも続いていて、グッズは豊富。特にTシャツなどのアパレル商品が充実している。
2F
2Fには、当館のメイン展示の一つであるクラゲ展示があります。他にペンギンやエトピリカ、タッチプール、波をテーマにした展示などが見られます。また1Fにもあるジャイアントケルプやラッコ、外洋の水槽は2Fにも繋がっており、違った角度から見学できます。
クラゲコーナーの入り口。各コーナーの入り口には、写真の看板ではなく、巨大なモニターに動画が映し出されている。
ふわふわ浮かぶミズクラゲは癒し度満点。水槽と見ている人の影が合わさり、一つの絵画のようにも見える
当館の代表的な展示の一つでもあるブラックシーネットルの水槽。色が変わるライティングと水槽背景のブルーの特殊ペイントにより、幻想的で美しい世界を作り出している。これはぜひ写真に収めたい。
クラゲの成長過程を説明しているコーナー。水槽とモニターによって、各段階を順番に説明。さらに、展示コーナーの壁全体に、クラゲの映像がちりばめられ、クラゲの世界に入った感覚になる。
水族館前の海から採ってきた海草に付いている生物を、顕微鏡で見せてくれている。ワレカラやクラゲの幼生などが付いていた。
外洋の生きものを展示しているのは、水量450万リットルの大水槽。アオウミガメやシイラ、ミズクラ ゲが絶えず移動して暮らす姿が見られる。ここに は、クロマグロやアカシュモクザメなど大型の回遊魚も入っており、滅多にないがホオジロザメ(グレート・ホワイト・シャーク)が展示されるときは、ここに 入る。
水族館の目の前の海岸には、野生のゼニガタアザラシやカルフォルニアアシカ、ラッコ、海鳥(ヒメウなど)などたくさんの生きものが見られる。
最後に
モントレー湾水族館に は、多くの日本の水 族館が行っているようなイルカやアシカのショーなど派手なものはありません。それでも世界的に人気が高いのは、誰もが惹き付けられるような展示の面白さが あるからだと思います。見て、聴いて、触れて、嗅いで、ここではいろんな体験を通しながら海と仲良くなることができます。
機会があれば、ぜひみなさんも遊びに行かれてみてください。館内はかなり広いスペースになるので、時間に余裕をもっていくのがオススメです。
Monterey Bay Aquarium
入場料:大人29.95ドル、子ども19.95ドル、学生とシニア27.95ドル。
開館時間:午前10時~午後6時(夏期、冬期で開館時間が異なります。詳細はHPにて)
住所:886 Cannery Row, Monterey, CA 93940
電話:(831) 648-4800
URL:http://www.montereybayaquarium.org/
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